自分らしさ、を思いっきり楽しんで生きてきこう

「自分らしさ」ってなんだろう•••?

ありのままの自分で生きていくのは時に困難でもある。学生でも社会人でもそれは同じ。人間は十人十色で、100%自分を理解してくれる人なんて厳密にはいないのかもしれない...。家族でも、恋人でも、友人でも。

それでも。たった1回きりの人生。他人の視線や評価を気にし、自分を隠して生きていくなんてちっとも面白くない。自分は自分。人は人。私はこういう人間だと胸を張って生きていこう。トレンドや他人の評価に縛られない、自分だけのスタイルを大切に。例え「わがまま」と言われても。「自分勝手」と言われても…!
だってそれが自分だから。

これは、自分らしさに悩む3人の女性達。

 

 ~メイ(35)の場合~

IT会社に勤めているOLで独身のメイ。彼女の性格は控えめで、常に周りの顔色や評価を気にしながら生きている。職場では当たり障りない装いで通勤している彼女だが、本当は可愛い服もモノも好き。だが自分には似合わないと思っている。好きだらこそ購入しては自宅の引き出しに眠る出番の無い数多くのキュートなアイテム達。本当は“可愛い”を思いきり楽しみたいのに。

 

「私ってどうしてこんなにつまらない人間なんだろう……」

 

ソファに座ったメイの自嘲気味な呟きは誰にも聞こえずに消えていった。

 

翌日。メイは出社すると後輩の女性が挨拶してくれるので「おはよう」とやや笑顔を作り挨拶を返す。すると彼女がメイのバッグに付いているキーリングを見た。この雑貨はそこまで目立つアイテムではないので唯一、職場へ持ってくる物である。

だが―――。

 

「メイさん、そのハートのキーリングめっちゃ可愛いですね!」

「へ?」

 

いきなり褒められたメイは呆気に取られるが後輩の女性は、キーリングに目を奪われている。まさか気がつかれるとは思わなかった。隠そうとしても、もう遅い。隠す必要も無いのだがメイはどこか気まずくなってしまう。

 

「どこで買ったんですか? 私も欲しい」

「えっと……ネットで……。―――私には似合わないと思ったんだけど」

 

メイは自分で予防線を張った。「あなたには似合わない」と言われたくなかったから。びくびくしていると後輩の女性は「どうしてですか?」と首を傾げる。予想外の反応にメイは驚く。可愛い物は不釣り合いと思われないように生きてきたから。

 

「似合いますよ。メイさんって可愛い物とか雑貨とか好きでしょう?」

「え!?」

「いや、驚き過ぎですよ。だって社内で可愛い文房具とかずっと見てるから」

 

私は知ってますよ、と続けた後輩の彼女が悪戯っぽく笑う。

 

「そうだったかな……?」

 

 確かに可愛い文房具をチェックしていたかもしれない。メイは完全に無意識だったが、それを見られていたとは思いもしなかった。

 

「私も可愛い雑貨が大好きですよ! 休憩時間にキーリングのネットショップ教えて下さい!」

「あ、うん。勿論、いいけど」

 

 後輩の彼女がもう一度、メイが付けているキーリングを見て「ほんと可愛い!」と呟いた。可愛いのは雑貨だとわかっているが、メイは自分が褒められているみたいでなんだか嬉しい。

 

「じゃ、今日も仕事頑張りましょー!」

「……う、うん」

 

後輩の言葉に呆気に取られたメイだったが、どこか清々しさを感じていた。その夜。メイは自宅の引き出しで眠る雑貨をひとつずつ取り出していく。

 

「似合わないって思っていても、可愛い物が好きでもいいよね」

 

今まで購入した雑貨達。アクセサリーにポーチ、カードケース。メイは通勤用のバッグも変えてそれらを詰めていく。

 

「好きなものに囲まれる生活って楽しそう!」

 

翌日。メイはビジネスシーンでも付けられるデザインのイヤリングを付けて部屋を飛び出す。服装も他人の目を気にした格好ではなく、メイが好きなやや綺麗めなスタイル。ポーチもカードケースも全てお気に入りの物。それだけで昨日とは違う通勤路。自分の人生を好転されるのはいつも自分。メイは幸せな気分で電車に乗った。

 

~リン(27)の場合~

美容師のリンはお洒落大好きな女性。稀に「個性的」と言われることもあるが、それすら彼女にとっては誉め言葉である。学生時代からお洒落に興味があったリンは将来の夢を早い段階から決めていた。「髪を何色に染めても怒られないから美容師になる!」と両親に言い放ち、宣言通り素敵な美容師になっている。青色の髪にピンクのネイル。洋服のスタイルは海外のモデルを参考にしてコーデを楽しむ毎日。そんなリンが働く美容室に中学生くらいの女の子が暗い顔をしてやって来た。

 

「いらっしゃいませ」

「……こんにちは」

 

泣きそうな女の子の髪色は黒髪ではない。染めたように明るい。色素が薄いのかもしれないと瞬時にリンは思う。

 

「あの。予約してないんですど。カットしてもらえますか?」

「はい。少しお待ちいただければカットは可能です。ご指名はございますか?」

「……お姉さんに切ってもらいたいです」

「かしこまりました! 少々お待ちくださいね」

 

女の子の顔色が気なったリンだが、店のカードを受け取るとカットの準備に取り掛かる。ちらっと待合室のソファに座る女の子を見るとやはり悲しそうな顔してスマホを見ていた。

明らかに多感な時期。リンも中学生の時は色々あったもの。わかるわかると頷く。準備が終わり、女の子をカット台へと案内する。

 

「今日はどんな感じにします? 今は長めのボブだけど切っても良いのかな?」

 

リンが鏡超しに女の子へ問う。すると次の瞬間、女の子は泣き出してしまった。

 

―――え!?

 

「どうしたの? 大丈夫?」

 

大粒の涙を流す女の子にリンは大いに慌ててしまう。落ち着かせようと背中をとんとん叩いてやる。

 

「……っ! すみません……」

「ううん。落ち着いた?」

 

メイの問いに頷いた女の子が「実は」と言いにくそうに口を開く。

 

「学校の先生に『髪を染めて来い』って言われて」

 

目を赤くする女の子にリンは「え?」と驚いた。この令和の時代になって尚、そんな先生が存在する事実に。

 

「でもこの髪色は地毛なので。親から学校に説明もしてもらっているのに」

「……なのに染めて来いって?」

「そうです。染めるのが嫌なら、短く切って来いって」

「はぁ?!」

 

―――理不尽にも程がある……!

 

リンは気持ちを落ち着かせながら、鏡超しに女の子を見た。

 

「えっと、名前はアンリちゃんだよね。アンリちゃん自身はどうしたい? 先生に言われたことは一旦、無視しよう」

 

するとアンリは唇を噛み締めながら「髪は切りたくないし、黒染めもしたくない」と小さな声で言った。確かにそうだろう。彼女は何も悪いことなどしていない。髪色も地毛だ。

 

「だったら切らなくて良し! このままでいよう」

「え……。でも嫌だって言ったら先生にそれは『わがまま』って言われたんです。『自分勝手』だって」

「ううん。それは違う。―――この髪色はアンリちゃんの個性なの」

 

リンがにこやかに笑うとアンリが驚いた顔で「個性」と呟く。リンからすると、アンリは髪を黒に染め直す必要も、切る必要もない。学生なのでお洒落は楽しめないかもしれないが。お洒落だって、誰かに言われてするものでもない。したい人はして、したくないならしなくてもいいのだから。決めるのはいつだって自分。

 

「海外にはね、アンリちゃんみたいな髪色の子が沢山いるよ。でも学校の先生達は『黒く染めてきなさい』なんて絶対に言わない。それはそれぞれの個性を受け入れているから」

「そうなんだ……」

「うん。だからそれは先生と話す必要があるよね。お母さんから話してもらおう」

「……わかりました」

 

こうしてアンリは髪を切らずに美容院を後にした。

 

後日。美容院へとやって来たアンリは前と違い明るい笑顔だった。話を聞くと学校側とアンリの母親で話し合いの場が設けられたらしい。学校側としても、生徒の個性を最優先させるという方向で決定したとのことでリンも胸を撫で下ろした。

 

「リンさん、本当にありがとうございます!」

「アンリちゃんが頑張ったからだよ」

「ううん。あの日、リンさんに会わなきゃ私は髪を切ってたと思う。だから本当に感謝してます。だからね、私もリンさんみたいな女性になりたいんだ」

 

嬉しそうに話すアンリの言葉にリンは泣きそうになった。美容師になって本当に良かったと心底思う。

 

「ありがとう。自分の個性を大切にね!」

 

自分の個性を潰す必要も消す必要も無い。そう、自分を輝かせるのは自分だけ。

 

~ミオ(30)の場合~

都内の商社に勤めるミオは仕事大好きのバリキャリ。まだ歳は三十と若いが主任という立場でもある。性格もさっぱりして人の悪口も言わないので周りからも頼りにされる女性。だがそんな彼女にも実は悩みがあった。

 

彼女の悩みとは、女性は避けては通れない結婚と出産についてである。歳のせいか最近、上司や同僚、あげく後輩までに「結婚しないの?」や「子供は欲しくないの?」と聞かれる頻度が多くなっていた。その都度適当にはぐらかしていたミオだったが、遂に感情が爆発してしまう。それは母親からの電話だった。

 

『近所に住んでたユイちゃんが結婚して、子供が生まれたんだって!』

『へぇーそうなんだ』

 

興味がなさそうに相槌を打ったミオには気がつかない母親は話を続けていく。

 

『女の子だって! ねぇ、あんたはまだ? 彼氏は出来たの? 仕事ばっかりしてないでちゃんと良い人を見つけなさいよ』

 

またこれだとミオは思う。内心苛々していたが怒りを抑えて『わかってるって』とだけ返した。

 

『わかってないでしょう。ミオも三十なんだからそろそろ子供だって』

 

言いたい事がわかってミオの怒りは頂点に達した。いくら親でも言って良い事と悪い事がある上に、この発言は現代では大問題である。有名人だったら炎上するだろう。

 

『あぁ、もう! うるさいな! お母さんの人生じゃないじゃん!』

『お母さんはあんたを心配して言ってるの』

『だからそれがお節介なんだって! 私はお母さんみたいな人生は嫌なの!』

 

母親が息を呑む。ミオは通話を切ってスマホをソファに投げつけても怒りが収まらなかった。

 

―――私はユイちゃんでもお母さんでもない! 私の人生なのに!

 

翌日。昨夜の怒りからやや寝不足のミオだったが仕事の所用があり上司の元を訪れていた。彼女はミオと同じで仕事人間ではあるが、既婚者で子供もひとりいる女性だ。密かにミオが憧れる人物でもある。

 

「おはようございます」

「あぁ、おはよう。来てくれてありがとう」

 

挨拶からすぐに仕事の話になりミオも集中していく。十分ほど、業務の話をしたあとで上司が「で?」と唐突に聞いてきた。

 

「え?」

「寝不足でしょう。化粧で隠せてない」

 

ミオはとっさに目元を手で押さえる。確かに寝不足ではあるがまさか見抜かるとは思っていなかった。上司にはなんでもお見通しらしい。はぁと溜息をついて「実は」と口火を切った。母親と喧嘩した理由を素直に話すと上司は成程ねと共感したように頷く。

 

「……正直、私は結婚にも子供にもあまり興味がなくて」

「そっか。―――ミオの言う通り、あなたの人生なんだから好きに生きればいいの。誰かと比べる必要なんてない。ユイちゃんのように生きなくても問題ないわよ」

 

豪快に笑う上司にミオの心が軽くなっていくのを感じていた。彼女の言う通り、自分が知人の様に生きる必要も、母の言う通り生きる必要はない。

 

―――これは私の人生。だから自分の好きなように生きる!

 

「そうですよね! ありがとうございます!」

 

ミオはすっきりした気持ちだった。もしかしたらこれからの将来、結婚したくなるかもしれない。子供が欲しいと思うかもしれない。その時がきたらまた考えればいいだけ。ミオはまるで新しいに出会ったみたいにウキウキしながら、仕事へ戻っていった。

 

人の意見や目を気にせず、自分らしく生きるということ

彼女達の同じように、きっと誰もが自分らしさを探して生きていると思います。自分らしく生きているとワガママと思われたり、批判されてしまう時だってある。だけどそんな事を気にして、自分を隠してしまったらあまりにも人生は勿体ないものだと思いませんか。だって

“今の自分で生きられる人生はたった一度だけ!それなのに自分を偽ったり、隠したりして生きるのは虚しいし、窮屈になってしまう。人の目を気にして、ビクビク怯えて生きるのはつまらない。”たった一度の人生“ならば、楽しんだ者勝ち!

だから…時に人から批判されても、ワガママと思われても。自分の人生を思いっきり楽しく生きましょう!